3兄弟編⑦長男の挫折
前回のつづき。
長男が学校の先生にはならないと言ったのは、大学4年生の夏でした。
本来なら、夏に教員採用試験が行われ、それを受けるとばっかり思っていた私は、突然の事に驚きました。
明日が教員採用試験という日に、長男が突然帰って来たのです。明日試験じゃないの?何で帰って来たの?と聞く私に長男は、教員採用試験は受けない事にした、というのです。
私「何で?」
長男「教員になるのは辞めた。」
私「え、何で?いつから考えてたの?」
謎がいっぱいの私に、長男は更に驚く事を言ったのです。
長男「大学も辞めようと思ってる。」
私「待って待って、何でそうなるの?今4年生 だよね?あとちょっとじゃん。」
私は更に頭が混乱して、長男に詰め寄りました。そこで発覚したのが、来年の春卒業出来そうにないという事。
そこで、冷静になって一つずつ、じっくり聞く事にしました。
長男の言い分は、まず大学で教員になるつもりで勉強していたが、3年生の頃から何か違うと感じていた。教育実習とかで、教壇に立つと生徒より一段上にいる自分に違和感を覚えた。先生と生徒という立場上、仕方のない事だけど、そこで自分は本当に教壇に立って教えるという事がしたいのか、と疑問に思った。
自分が中学、高校、大学と過去を振り返った時に、自分に真剣に向き合ってなかった事に気が付いた。何となく勉強が嫌いではない、高校受験も大学受験も、さほど苦労はなかった。勉強の中で何が得意かと考えたら数字だった。何となく中学校の数学の先生になりたいと思って、大学に通っていた。
しかし、考えは甘かった。数学の点数が上がらない、こんなに苦労すると思ってなかった。初めて挫折したのです。逃げてると思われても仕方ないけど、このまま教員を目指す気にはなれない、と言うのです。
私は頭から反対しても仕方ないと思い、黙って長男の言い分を聞きました。そして、長男の言葉は続きます。
大学3年の頃から、教員になる事を辞めようと思い始めたら、成績も維持するのが難しく、単位も足りなくなってきた。留年は免れないと感じ始めたが、うちは母子家庭。下にはまだ弟が2人いる。自分が大学行かせてもらうのも、お母さんが相当無理してるのはわかってる。だから、留年はせずに中退すると言うのです。
長男は、子供の頃から反抗期もほとんどなく、3人兄弟の長男として、弟達の面倒もよく見てくれて、私の事も支えてくれた。その長男が初めて挫折して、その思いを私にぶつけてきた。私はしばらく考えて、冷静に長男を説得しました。
つづく。